倒産多発で契約実務講習会を開催  平成14年7月17日
   
最近、JV倒産が多発していることを受けて、沖建協は西日本建設業保証鰍フ協力のもと、7月17日(水)午後2時から、浦添市民会館中ホールで、契約実務講習会を開き、約200名が熱心に受講した。
 講師は元裁判官の経験もある法常格(のりつね・さとる)弁護士だ。法常氏は昭和24年生まれ、大分出身。京都大学卒業。平成5年に裁判官を退官し、弁護士事務所開業。
 法常講師は、裁判官16年、弁護士10年の経験の中で、数多くのJV倒産事例を手がけ、その体験からJVの法的性格や前払い金などについて分りやすく説明した。

講演の要旨は次の通り。
 JV工事に関する相談が最近、建設業者から多く持ちこまれるようになった。日本を代表する中堅ゼネコンまで倒産するようになり、これまでめくら判を押していた業者からどうにかならないか、と相談を持ち込まれるケースが増えている。結論から言うと、JVの法的性格は、実質JVであれ、ペーパーJVであっても何ら変わらないということである。
 業者間の長い付き合いで断りきれないケースが多いが、大手でも倒産する時代だ。内容を充分吟味せずに、めくら印を押すことだけは絶対さけるべきである。代表者が倒産した場合、「協定書を読んでいなかった」では済まされない。発注者や下請けに対して、厳しい責任を負うということを、肝に銘じておくべきだ。
 代表者が倒産した場合、特に事態は深刻である。倒産には二種類ある。一つは再建型、もう一つは清算型倒産だ。再建型には民事再生法や会社更正法による手続きがあり、民事再生法が経営者にとって有利。再建型倒産の場合は施工能力もあり、構成員の関係も原則として変わらない。これに対して清算型の場合は破産、会社整理、特別清算等の手続きがあり、100%施工能力を有しないので、契約解除となる。
 JVについて、特別法はなく、民法の組合(607条)という考え方が原則適用される。従って、JV工事の場合、一方の構成員が倒産した場合でも、他の構成員が発注者や下請け等に対して、全責任を負うのである。但し、構成員単独で下請け契約した場合は、その限りでない。
 JV倒産で問題になるのは、前払い工事金を受け取り、しかも出来高以上に支払われた場合だ。前払いは、ひもつきのお金という認識が必要である。前払い金は発注者からのいわば、信託を受けた財産であり、その管理は厳格に行われるべきである。工事金のみに支払わなければいけない。JV協定書でも、JV工事の代表者名を付して別口座で管理しなければいけない、と明確に規定している。倒産になった場合、この管理方法が極めて大事になってくるのだ。
 結論として、JV工事で倒産した場合、JVの代表者が倒産した場合でも、構成員が倒産した場合のいずれであっても、組合である以上、残った構成員は連帯債務を負い、工事を完成させる義務がある。工事の瑕疵や補修の義務もすべてである。そのためにも、前払い金等の財産管理は明確に規定しておかなければならないし、経費の支出も全構成員が認識すべきである。加えて下請関係もしっかり把握すべきである。法律は、転ばぬ先の杖、である。問題が起こってからでは遅い。
 


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